文体のひみつ
文章の楽しみ方
文章の楽しみ方は物語やテーマ、情報など何が書かれているか、語り手の癖や世界の切り取り方といった誰の目で描かれているか、そして言葉のリズムや語り口、間の取り方といったどんなふうに描かれているかの3つがある。
文体とは
こんなに情報が溢れている現代においても、ふと目に留まり、頭の中へ入り込み心を揺さぶった挙句、記憶に居座り続ける技術は文体にある。
正しい文章はAIが書けるが、相手の心を掴むような文章はやっぱり人間にしか書けない。
文体とは書き手の味、絵でいうタッチ、音楽でいう歌い方である。
惹きつける文体
最初に”引っかかり”を放り込む
最初に「これ、どういう意味?」という引っかかりがあると、どうしても続きを読みたくなる釣り糸になる。
いきなり”ポロリ”を放り込み、戸惑わせた後に内容を説明する。
問いの共有
「どういうわけか洗面所がビシャビシャになる」と問いを勝手に共有して自分自身もその答えを見つけられないことで、同じスタート位置からあぁでもないと一緒に過程を辿っていくことが重要。
結果的にゴールに辿り着いてもつかなくても、共感した思い出だけ残れば良い。
遠い話題を近くに
分かりやすい議論の入口としてあえて答えが分かりそうな問いを用意し、読み手にとって遠い話題を近い話題にしてあげる。
最近の天気って変じゃない?という話題から地球温暖化へ繋げるなど、重要なのは上から目線で高い位置から低い位置に下ろしてあげるのではなく、遠くから近くへ丁寧に持ってくる優しさを持つこと。
日常から非日常へ
毎朝ラジオ体操をしているとか通勤時にK-POPを聞いてるなどオリジナリティなどない「どうでも良いこと」といったありふれた日常から意外な展開を見せることで「何それ?」につながる
過去型の思い出話で一緒に辿る
まず話の内容を明かさずに「これは過去の話です」と宣言し、現実の自分から見た記憶を語ることで、読み手と同じ”現在” に立ってあげる。
読み手が置いて行かれた平面的な話ではなく、すぐ近くで語りかけているような臨場感を感じられる。
2つを並べて書き出しを打破する
「カステラは最高」と言いたいがために、テーブルの桐の花を並べることで魔法の書き出しになる。
”菊とバット”や”老年と開脚”といった、一見何の関係もない2つの単語を並べることで、オリジナル作品になる。
自分を当事者から距離を置く
ブスの自信の持ち方を”考察しよう”というようにあくまで自分は当事者から距離があるよ、というスタンスに立つ。
炎上しそうな難しいテーマならば、観察対象として書いてみる。
先が読みたくなる文体とは
読みたくなるリズム
一定のパターンの繰り返し、切れ目ごとの音節の節をずっと一定にすると、前後の文脈を知らなくても読めてしまうリズム感のある文章になる。
リズム感のある文章にするには同じ語尾を繰り返したり、一文を短くしてみたり、カギ括弧や語尾、接続詞を変えてみる。
言い切るだけでなく曖昧さを残す
思う・感じるなど語尾を曖昧にすることで、読み手に語りかけ共感できる記事になる。
「〇〇と思うんだけど、みんなもそうじゃない?」と提案しておいて、〇〇なのかもしれませんで一旦締めるのもあり。
迷いを含む文章の方が知的に映ることもあるかも。
カギカッコで読ませやすく
会話文って目で追えて読むのも楽なので、女性向けコラムなどボヤッとページをめくる時にも読ませやすい。
同じ内容を書いてもカギカッコがないだけで、読み飛ばされて印象に残らない。
語尾をぶった斬る
たとえ文法的に間違っていても無駄のない情報の方が伝わりやすい。
逆にしっかり説明しようと長い文章にしてしまうと肝心な情報が伝わらない恐れも。
語尾を体言止めにすることで文章量が少なくても、不思議と伝わる情報が増える。
極端な口語を使ってみる
心の中の声や言われた言葉、された行為に色付けすることで、事実だけどまるで”フィクション”に感じるような表現を使ってみる。
「いたたたた」とか「ごるぁ」などオーバーに表現することで、そのときの感情だけでなくコミカルに親しみやすさが伝わる。
ちなみに前フリで情景を正確に描くことで、オーバーなセリフが余計に生きてくることも。
ひらがなの印象を使う
ひらがなは漢字よりもゆっくり読ませる効果があるので、目を留めて内容を咀嚼して欲しい時にぴったり。
アクセントをつけたい言葉・漢字が連続するとき・手書きした時に漢字で書かなそうな言葉をひらがなを使うことで、高尚な感じではなく親しみやすさが出る。
ただしひらがなを多用し過ぎると読みづらい、幼稚に見られてしまうので注意。
こちらの感情を見せない
ただただその時の状況を描くことで読み手の想像を掻き立てる効果があるので、こちらが本当に思っている感情は書かない。
「好き」とか「楽しかった」とかはっきり書かずに、状況から感情を想像させるとリアリティが増す効果も。
はっきり書くと興ざめになることもあるので、言葉そのものよりも行間で高ぶらせることを意識する
接続詞を隠す
接続詞が多いほど文章が鈍臭くなるので、ここぞという時まで我慢することでその物の印象を強くできる。
ただし「しかし」とか「でも」といった逆接の接続詞は削ると意味不明になりやすいので注意する。
逆に削っても意味が通る文章ならば積極的に接続詞を削ると個性が出る。
急に喋る
「聞いていた」とか「と気がついた」といった断定口調の前半から急に「認めてなんかくれないよ」と急に口語で喋り出すとグッと読み手の心が引き寄せられる。
書いている途中に文体を変えることで、冷たかった文章が急に体温を持つようなギャップにドキッとする効果。
読点で操る
読点は多いほどリズムは落ちるが、一語ずつ丁寧に語りかけてくれる印象を持つ。
逆にレポートなどのドライな印象を与える時は読点少なめだと効果的。
身近な人を登場させる
作者しか知らない誰かを引き立てることで、伝わる主張もある。
普段あまり語らない人やその道の偉い人などを登場させると自分の主張の裏付け要素になり、さらに自分と他人の境界をぼかすことで文章に強い説得力が生まれる。
思いを全部並べて重ねる
文章はなるべく簡潔にいらないところは削るのは基本であるものの、自分の感覚や感触まで削り落とす必要はないのかも。
一言でまとまらない歯切れの悪い文章でも、手探りで平凡な形容詞を何回も並べて重ねてみることで、書き手の心情を読み手に伝えてみる。
絵だけでなく映像を描かせる
まずその風景を絵として繋いでみて、そこから焦点の当て方を工夫してみる。
「あるはずの湖が見つからない」といった俯瞰の説明を入れた上で、わずかな隙間から湖が見える、靄で煙っていた、中年婦人が野菜を洗っている、など実際のカメラワークを想像しながら読み手と一緒に歩いている気分にさせる。
でこぼこ言葉を使う
読みやすい文章なら読み手も滑るように読んでくれるけど、心に印象を残したいならば”でこぼこ”が必要。
「氷のように清潔」のように普通は2語がダイレクトに連想できないから読み手が気になり出す。
また「愛情」と「不潔」といった+ーが真逆の言葉を合わせることで、読み手の印象に残りやすい。
主観をそのままくっ付ける
身の回りの状況や出来事を伝えるとき「淡々と」伝えると温度が低く印象に残らない。
「不便ではない」とか「思いの外に家賃が安く」など景色の一つ一つに自分がどう感じたかの主観を加えられると、しみじみと情景への感慨が伝わってくる。
つまり同じ風景描写でも「スープが濃厚、明日が心配。。」なのか「スープが濃厚、飲み干したくなるやつ」なんて挿入する主観によって描かれる絵の印象がまるっきり異なることになる。
段落で呼吸を整える
一段落は一息で読んで欲しいところまでにまとめてみる。
たとえば「現実を認める文章」と「希望に向かう文章」はペアとして一気に読ませる。
イメージとしては前半で吸って、後半で吐いてのリズムでひと段落。
自分で書いた文章を読み返して、一気に読ませたいなら段落は少なく、ゆっくり読んで欲しい時は段落多めに意識する。
一段落に中に吸って吐いての二山があると理想的。
説得力を生む文体
あえて余白を残す
説明書や契約書のような文書を除くと、補足のための文章が”くどい”と感じられるかも。
あえて説明しすぎず、余白を残す文章は粋な文章に化ける。
「あぁそういうことか」と読み手にオチや面白さを見つけさせる…の部分をあえて残してあげれば読み手と知的なつながりを生むことも。
「あるある」から始める
文章のゴールが「読者の心を動かすこと」ならば、セールストークのゴールは「商品を買いたくなるよう心を動かし、行動を促すこと」である。
シニア向けウォーキングシューズならば機能やメーカーなどではなく、「立ったまま靴下を履くのがきつい」とか「買い物かごを持つのが辛い」などシューズの価値=ウォーキングするモチベーションと伝えてみる。
つまりお客さん側の関心を徹底的に伝えることが重要。
作品の感想を書くときも自分が面白いと思ったことをダラダラ書き連ねず、読者が面白いと思うポイントはどこなのかを意識して書いた方が読み手の心情を掴みやすい。
アンチに先回りしてフォローを入れる
「完璧に片付ける!?そんなの無理」という反論を即座に「そんなに違和感を持つ必要はない。なぜならば…」とフォローすると読者もその続きが仕方ない。
言いたいことを思い切って言い切ってみて、想定される反論に対して即座にフォローを入れて安心させる。
新しい言葉に言い換えてみる
あまりにもコンパクトにまとめてしまうと内容がスカスカになってしまうことも。
「動詞はその人の生きる姿勢に投影されやすい」という普通の主張を「動詞は体を表す」など同じ内容だけど違う言い方に変えてしまうと、自分が知らなかった新しい情報を与えてくれる面白い文章になる。
ただ新しい言い方にするだけでなく、慣用句などみんなが知っている表現をアレンジしてみるとさらに良し。
言いたいことのセンターを決めておく
「リアルな人間関係で傷つきたくない人が増えた」から「擬似的に構ってくれるお店が増えた」といった難解な内容を伝えたいときには、シンプルに一筋の思考の流れを整理しておく。
言いたいことをリストアップし、グループ分けをする。
そのグループの中から最も伝えたいセンターを決めるという順番で整理して書けば、読み手も頭の中で文章を再構成して理解してくれるはず。
自分で覆してその先を読ませる
「書いた記事をWEBで読んでもらうにはどうしたら?」というシンプルで誰もが気になるテーマを最初に投げかけて、一旦普通の回答をする。
その後に「でもそれでは足らない」と覆されると続きがどうしても気になってしまう。
重要なのは古い考えも否定せず、その先にまだ新しいことがあるよ、と気づかせること。
全員が共感すると親近感が湧く
「バナナのアイスキャンディを毎日食べさせられた」という個人的エピソードをきっかけに「お母さんという生き物」という一般名詞を登場させることで、作者個人の思い出が私たちの記憶に化ける。
同じエピソードがなくても「お母さんってこうだよね」という共感を生む。
個人的なエピソードは正確であるほど、私たちの記憶は大雑把であるほど効果的。
急に気持ちをスイッチしてみる
流れるように読まれる文章とは「不安だったけどうまくいった」など同じ趣旨のことを重ねて書いている状態。
ただその後に逆方向の一文を入れると流れが一転し、その感情の動きについて行きやすい。
つまり最終的にプラス方向で話を締めたい時はマイナス、マイナス、マイナス、プラスといった感情の起伏を意識して書くとメリハリがついて読み手も着いてきやすい。
分不相応なものに価値を与えてみる
漱石の鼻毛などどうでもいいものを取り上げてみて、不相応な価値を与えてみる。
鼻毛というどうでもいいものに対して、人手不足とかレッドカードで退場させられたサッカー選手など擬人化してありえないほどの価値を与えてみる。
するとどうでもいいものがまるで違うものに見えてくる、という不思議な現象が。
いつも見過ごしているどうでもいいものを擬人化し、「世界がどう見えているんだろう」と代弁してみると斬新な視点が身につくかも。

