重要事項説明(35条書面)とは

重要事項説明とは商品説明である

不動産とは高価で様々な法律が絡む商品なので、宅建士は契約前に重要事項説明を行う義務がある。
重要事項説明とはこれから行う不動産取引の商品説明であるので、｢絶対に説明されなくては困る｣ことは説明義務であり、｢説明されなくてもいいだろう｣ということは説明義務でないことが多い。
つまり宅建業者は買主または借主に契約前の時点で物件に関する重要な情報を知らせ、買主または借主はこの商品説明をもとに本当に契約してもいいかどうかを判断する。

重要事項の説明義務者と説明担当者

重要事項の説明義務者は宅建業者であり、宅建業者は物権の契約前に宅建士に重要事項説明をさせなければならない。
この時の"宅建士"とは専任でなくてもパートやアルバイト等の宅建士が説明しても問題ない。

ちなみに買主や借主が宅建業者であれば、重要事項の交付は必要だが、説明は不要である。

重要事項説明書と契約書との比較

35条書面と37条書面の比較

	重要事項説明書	契約書
説明の趣旨	契約の判断材料となる商品説明	契約内容の確認
義務者	宅建業者	宅建業者
説明方式	・宅建士の記名 ・宅建士による説明が必要	・宅建士の記名 ・宅建士による説明は不要
交付時期	契約締結までに	契約締結後、速やかに
交付の相手	・取得者 ・借主	契約の両当事者
交付場所	規制なし	規制なし

重要事項説明の方法

宅建業者は宅建士をして、物件の取得者又は借主に契約締結前に書面を交付したうえで重要事項の説明をさせなければならない。

重要事項の説明内容

売買・交換・賃借

1. 登記された権利の種類・内容

抵当権等の権利が登記されている場合は、抹消される予定であっても記載と説明が必要

2. 法令上の制限

都市計画法や建築基準法など

3. 私道に関する負担

負担がない私道でも｢負担なし｣と説明が必要
ただし建物の賃借の場合は説明不要

4. 飲用水・電気・ガス・排水設備

整備されていないときは整備の見通し、特別な負担の説明が必要

5. 未完成物件の完成時

未完成物件の完成時の形状や構造を説明するときに、必要ならば図面を交付して説明
宅地では造成工事完了時における接道の構造や幅員、建物ならば主要構造部や内装・外装・設備などの説明が必要

6. 代金・借賃以外の｢額・目的｣

手付金や敷金・権利金など代金・借賃以外に授受される金銭の額と目的の説明が必要
代金・借賃の額は契約で決めるので重要事項説明では説明不要

7. 契約の解除

手付解除や契約解除における要件・方法やその効果を説明

8. 損害賠償の予定・違約金

損害賠償の予定・違約金は重要事項にて説明が必要

9. 支払金・預り金の保全処置

代金・借賃・権利金・敷金などどのような名義でも｢支払金・預り金｣について保全処置の有無と概要(※)の説明が必要
※保全処置を行う機関の種類や名称・商号

ただし下記の場合は除く

受領する額が50万円未満のもの
手付金等の保全処置が講じられているもの
宅建業者が登記以降に受領するもの
報酬
10. 命にかかわること

下記のような防災・災害区域内に物件がある場合、その旨を説明
ハザードマップは物件の場所を説明するだけで、記載内容までは説明不要

造成宅地防災区域
土砂災害警戒区域
津波災害警戒区域
ハザードマップ
11. 石綿使用の有無

石綿使用の調査結果の有無を説明
調査結果があれば説明が必要だが、調査結果がない場合は｢ない｣と説明するだけで調査をする義務はなし

12. 耐震診断の内容

耐震診断を受けていれば説明が必要だが、昭和56年6月1日以降に新築工事に着手した物件は耐震診断を受けていても説明不要
耐震診断がされていなくても耐震診断をする義務はなし

13. 既存建物の建物状況調査

既存建物の場合に建物状況調査が実施されていれば説明を行い、建物状況調査が実施されていなければ調査する義務はなし
新築は対象外で中古住宅ならば賃借でも説明が必要
調査実施後1年を経過していないもの限定

売買・交換のみ

1. 設計図書・点検記録など書類保存の状況

設計図書や点検記録そのほか建物の建築・維持保全に関する書類の保存があるかどうかの説明のみで内容まで説明しなくて良い
賃借の場合は説明は不要

2. 担保責任の履行に関する措置

担保責任とは宅地・建物が種類や品質に関して契約内容に適合しない場合、その不適合を担保する責任かまたは特定住宅瑕疵担保責任のこと
措置の例として契約不適合責任の場合は保険と連帯保証が、特定住宅瑕疵担保責任の場合は供託がある
保険や保証を行う場合はその機関の名称・商号、保険期間、保険金額、保険の対象となる宅地建物の瑕疵の範囲を説明
供託の場合は供託所の表示、所在地などを説明する

3. 住宅性能評価を受けた新築住宅

住宅性能評価制度を利用した新築住宅か否かを確認するためのものであり、個別の評価の具体的な内容まで義務付けているものではない

4. 手付金など保全処置の概要

保全処置の例として銀行等の保証委託契約や保険事業者の保証保険契約など、保証期間の種類・名称・商号などを説明

5. 金銭貸借のあっせん内容

金融機関から融資が受けられないときに売買契約を解除できるローン条項などの代金(交換差金)に関する金銭貸借のあっせんの内容およびあっせんに掛かる金銭の貸借が成立しないときの措置を説明

6. 割賦販売の現金販売価格、引き渡しまでに支払う金銭の額など

ローン販売時の現金販売価格、割賦販売価格、引き渡しまでに支払う金銭の額、各回の支払金の額、その支払い時期・方法などを説明

賃借のみ

1. 建物の設備

エアコンやユニットバスなど台所、浴室・トイレその他の設備の整備状況を説明

2. 契約期間・契約更新

契約期間・契約更新について定めがない場合は定めがないことを説明する必要

3. 宅地建物の用途その他の利用制限

ペット禁止、楽器演奏禁止、事務所利用禁止などの宅地建物の利用上の禁止事項など

4. 敷金等の清算

滞納家賃との相殺や原状回復費用として充当するなど

5. 委託時の管理受託者の氏名・住所
6. 定期建物賃貸借・終身建物賃貸借・定期借地権
7. 契約終了時の建物取り壊しの定め

定期借地権の期間満了時に建物を取り壊し、更地にして返還するなどの定めがあれば説明

区分所有権のみに追加されるもの

売買・交換・賃借

1. 管理委託されているときの受託者の氏名・住所

管理内容までは説明しなくて良い

2. 専有部分の利用制限

ペット禁止、楽器演奏禁止、事務所利用禁止などの宅地建物の利用上の禁止事項など
特に規約がなければ説明不要

売買・交換のみ

1. 敷地に関する権利の種類・内容

所有権や借地権などの種類と面積や契約期間、賃料などの内容の説明

2. 共有部分に関する規約

共用部分の持ち分や集会室などの規約の定めを説明

3. 1棟の建物または敷地の一部の使用権の規約

住人専用駐車場や専用庭、ルーフバルコニーなどの規約の定めを説明

4. 計画修繕積立金の規約・積立額

滞納があれば滞納額も説明

5. 負担すべき管理費用

通常の共益費など
滞納があれば滞納額も説明

6. 計画修繕費・管理費の減免規約
7. 維持修繕の実施状況

記録があれば説明、なければ説明不要

8. 信託の受益権

原則として説明が必要
ただし下記の場合は説明不要

相手が特定投資家のとき
1年以内に同一内容を交付・説明済みのとき
目論見書交付の場合

IT重説について

IT重説とは対面で説明するのではなく、テレビ会議などのオンラインを活用して重要事項説明を行うことをいいます。IT重説を行うには下記4つの要件を満たしておくことが必要です。