所有権まとめ

所有権とは?

所有権とは所有者が所有物を法令の制限内で、自由に使用・収益・処分することが出来る権利のこと

所有権の性質
渾一性こんいつせい 単に使用権・収益権・処分権を合わせたものより、もっと包括的で全体的な権利
弾力性 たとえば借金のために自分の家に抵当権が設定されていても、借金をすべて返済すれば完全な所有権が戻るなどのように抵当権でヘコんだ所有権も抵当権の消滅により元に戻ること
恒久性 放置したとしても所有権は消滅時効に掛からない

所有権に関する憲法(29条)の規定

  • 財産権は保証される
  • 財産権は公共の福祉に適合するように、法律で定められてる
  • 私有財産が公共のために用いられるときは、正当に保証される
  1. 財産権は、これを侵してはならない。
  2. 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
  3. 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

【日本国憲法第29条】

土地の所有権

土地の所有権は法令の制限内でその土地の上にも下にも及ぶ
10階建てのビルを建てようが、地下室を作ろうが自由

  • 鉱物を採取する権利
  • 自分が所有している土地からダイヤモンドなどの鉱石が出てきても、鉱業権は国の物なのでそのままポケットに入れることは出来ない。

  • 温泉をひっぱって使う温泉権
  • 流水利用権

相隣関係そうりんかんけい

相隣関係とはご近所さんやお隣さんなど互いに隣り合う関係のこと
自分の土地を利用するために隣の土地を使わせてもらったり、隣の人が自分の土地を使用するのを認めてあげること

境界付近で家を建てるなどしたとき、必要な範囲内で隣の土地を使用することを請求できる
ただし隣人の承諾がなければ、隣家に入ることもできないし、もしも損害を与えたら弁償しなければいけない

  1. 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。
    1. 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
    2. 境界標の調査又は境界に関する測量
    3. 第233条第3項の規定による枝の切取り
  2. 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
  3. 第1項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。
  4. 第1項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

【民法第209条】

他人の土地を通らなければ公道に出られない土地(袋地)に住んでいる人は、公道に出るために隣の土地(囲繞地)を通ることが出来る
さらに必要であれば通路を開設することもできる

  • 自然の排水
  • 水が隣地から自然に流れてくる場合は、止めたりしてはいけない:承水義務

    土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならない。
    【民法第214条】

  • 流水の利用
  • 自分の土地に流れている小川の水路を変えたり、幅を広げたり狭めることは自由
    ただし対岸が他人の所有地であればダメ

    1. 溝、堀その他の水流地の所有者は、対岸の土地が他人の所有に属するときは、その水路又は幅員を変更してはならない。
    2. 両岸の土地が水流地の所有者に属するときは、その所有者は、水路及び幅員を変更することができる。ただし、水流が隣地と交わる地点において、自然の水路に戻さなければならない。
    3. 前二項の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。

    【民法219条】

  • 境界標設置権
  • 土地の所有者は隣地の所有者と共同の費用で境界を示す標識を作ることが出来る
    なお設置と保存の費用は双方が半分ずつ負担する

    土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。
    【民法第223条】

  • 囲障いしょう設置権
  • 隣地との間に共同の費用で境界に塀などを作ることが出来る
    なお設置と保存の費用は双方が半分ずつ負担する

    1. 二棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地があるときは、各所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができる。
    2. 当事者間に協議が調わないときは、前項の囲障は、板塀又は竹垣その他これらに類する材料のものであって、かつ、高さ2メートルのものでなければならない。

    【民法第225条】

境界線上にある塀などの工作物は共有物だと推定される
ただし共有でも分割請求は出来ない

境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。
【民法第229条】

隣家の木や竹の枝が境界線を越えてきたら、切ってもらうよう言うことが出来るし、言っても相当期間内に切ってくれないときは枝を切り取ることが出来る
隣家の木や竹の根が境界線を越えてきたら、勝手に切っても良い

  1. 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
  2. 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
  3. 第1項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
    1. 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
    2. 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
    3. 急迫の事情があるとき。
  4. 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

【民法第233条】

建物を建てるときは境界線から50センチメートル以上の距離を開けなくてはいけない。
また境界線から1メートル未満に隣が見える窓などを作る場合は、目隠しを付けなくてはいけない。

  1. 建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない。
  2. 前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から1年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。

【民法第234条】

  1. 境界線から1メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。
  2. 前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。

【民法第235条】

所有権の獲得

所有権の取得で最も多いのは他人の所有権や相続によって取得する承継取得取得時効による取得があり、他に下記の6種類の取得方法がある

無占物取得とは所有者のない動産を所有の意思を持って占有することでその所有権を獲得すること
たとえば海で釣った魚は釣った人の物になる、など

落とし物を拾って3か月間の公告を行った上で所有権が現れなければ、拾った人が所有権を獲得する

遺失物は、遺失物法(平成18年法律第73号)の定めるところに従い公告をした後3箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。
【民法第240条】

土地の中に埋まっていた物を発見して6か月間公告を行った上で所有者が現れなかった場合、発見した人が所有権を獲得する

埋蔵物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後6箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する。ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する。
【民法第241条】

所有者が異なる2つ以上の物が結合して社会的・経済的に見て1つの物と言える状態になった場合、元に戻すことがかえって不利益なるようなら、所得者を1人にしてしまったほうが合理的である
これを添付といい、付合・混和・加工の3種類がある

  1. 第242条から前条までの規定により物の所有権が消滅したときは、その物について存する他の権利も、消滅する。
  2. 前項に規定する場合において、物の所有者が、合成物、混和物又は加工物(以下この項において「合成物等」という。)の単独所有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その合成物等について存し、物の所有者が合成物等の共有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その持分について存する。

【民法第247条】

不動産の所有者はその不動産に付合した物の所有権を獲得する
つまり不動産が主物で付合する動産が従物となり、動産の所有権が不動産に飲み込まれる

不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
【民法第242条】

所有者が別の複数の動産が結びついて分離できないまたは分離に莫大な費用が掛かる場合、その合成物の所有権は主要な物の所有者に帰属する

所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも、同様とする。
【民法第243条】

細かい物が混合したり、液体が融和することを混和といい、付合と同様に考える

他人の物に手を加えて新たな物を作ること

  • 加工物の所有権は原則として材料の所有者に帰属する
  • ただし加工を加えた結果、その加工物の価格が材料の価格をはるかに超えた場合は、加工者が所有権を取得する
  • 加工者が材料の一部を提供した場合は、その価格と加工の結果生じた加工物の価格の合計が、他人が提供した材料の価格を超えた場合に限り加工者が所有権を取得する
  1. 他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。
  2. 前項に規定する場合において、加工者が材料の一部を供したときは、その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者がその加工物の所有権を取得する。

【民法第246条】

共有

共有の3パターン
共有 1つの物を2人以上で購入した場合など
合有ごうゆう 組合の財産など
総有 入会権や温泉権、漁業権など

共有者の所有の割合を持ち分といい、持ち分に基づく共有者の権利を持分権という

共同所有の場合それぞれが「所有」しているので、持ち分に応じて物の使用や収益、処分ができる
共有者はそれぞれ単独で共有物の保存行為をすることが出来る
共有物の利用・改良行為については持ち分の過半数でどうするか決めることが出来る
共有物の変更には全員の同意が必要である
共有者の一部が持分を放棄したり、相続人なく死亡した場合は他の共有者の物になる
共有者はいつでも各共有者の請求によって分割することも出来るし、5年以内の期間を定めて分割を禁止することもできる

  1. 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
  2. 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

【民法第246条】

  1. 共有物の管理に関する事項(次条第1項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第1項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。) は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
  2. 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。
    1. 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
    2. 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。
  3. 前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
  4. 共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。
    1. 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等:10年
    2. 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等:5年
    3. 建物の賃借権等:3年
    4. 動産の賃借権等:6箇月
  5. 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

【民法第252条】

共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
【民法第255条】

  1. 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
  2. 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から5年を超えることができない

【民法第256条】

組合財産の所有は合有である
合有では持分を自由に処分することは出来ず、目的物の分割請求も禁止されている