物権まとめ
物権の定義
物権の定義とは物を直接的・排他的に支配する権利をいう。
直接的
他人の行為を必要としない:いつ誰に対しても主張できる
排他的
同一物の上に同内容の物件は複数存在しない
権利
自分の好きなように使用・収益・処分が出来る
妨害を排除できる
物権と債権の違い
物権 | 所有権絶対の原則 | 物を直接支配 | 対物権・直接支配権 | 誰に対しても主張可能 | 1つの物には1つの物権 | 物権は債権に優先 |
---|---|---|---|---|---|---|
債権 | 契約自由の原則 | 債権者に行為を請求 | 対人権・請求権 | 債務者に対してのみ請求可能 | 1つの物に複数の債権が可能 | 債権と債権は平等 |
所有権は物権の中心
所有権は基礎的な財産権であり、物権の中心的存在である
所有権は物を全面的に支配する権利
所有物を捨てようが壊そうが所有者の自由
所有権は放置していたとしても消滅時効にかからない
所有権の弾力性
所有権の一部は他人に譲渡ができる
- 自分の土地上に他人が地上権を設定
- 所有権の一部が制限される
- 地上権設定契約が終了
- 全面的支配権が復活
物権の種類
物権法定主義
物権は強い権利なので、法律で定められたもののみ認められる
10の物権
本権以外 | 占有権 | |
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自分の物に対する物権 | 所有権 | |
他人の物に対する物権 | 用益物権
|
担保物権
|
占有権
占有権は事実上の支配状態(占有)に関する物権
用益物権
用益物権は他人の物を使用して、利益を上げる物権
(例)他人の畑に永小作権を持ち、野菜を作って売って利益を上げる
担保物権
担保物権はお金を借りるときに担保にする物権
(例)自分の家に抵当権を設定し、住宅ローンを組む
所有権
所有権は用益物権と担保物件の両方が含まれている。
物権の効力
物権の効力は優先的効力と物権的請求権に分けて考えられる
優先的効力
- 先の物権が後の物権に優先する
- 物権は債権より優先する
物権的請求権
妨害排除請求権 | 物権の支配が妨害されている場合 物権の権利行使が邪魔されているとき、邪魔を排除し円満に権利行使ができる状態に戻す |
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返還請求権 | 占有を取り返す場合 占有が奪われているときに奪い返す請求権 |
妨害予防請求権 | 物権の支配が妨害される恐れがある場合 近い将来に妨害される恐れがあるときに、未然にその妨害を防ぐ措置を請求する |
物権変動とは
物権変動とは物権の発生・変更・消滅のこと。
つまり物権を獲得したり、失ったり、内容を変えること。
物権変動の原因
法律行為による物権変動
物権の設定および移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生じる。(民法176条)
法律行為以外の物権変動
- 相続
- 遺失物拾得
- 埋蔵物発見
公示の原則
物権変動があった際はその変動が外部から見て分かるようにしなければならないという原則。
この公示がない場合は物権が変動したことを第三者に対して主張できない。
公示の方法
民法では下記3つの公示方法を定めている
不動産物権 | 登記 公の帳簿に記録する |
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動産物権 | 占有 所持していること |
樹木や果実 | 明認方法 立札など外部から見て分かる目印 |
公示がなければ?
公示がなくても物権変動は有効に生じるが、それを第三者に対抗は出来ない
公信の原則
外見上、権利があると誤解してもやむを得ない場合に、その外見を信じた人を保護して取引の安全を守る原則
不動産の場合
動産取引については頻繁に行われ、スピードが要求されるので、公信の原則を認める。
不動産取引では公信の原則は認められない=外見を信用して取引したとしても保護されない。
公示の原則 | 権利を公に示す 権利があっても公示しないとダメ! |
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公信の原則 | 公示を信じたものを保護する 無権利者との取引でも、公示を信じた理由があればOK! |
不動産の物権変動
不動産の物権変動=登記
不動産の物権変動は当事者の意思表示のみで成立:意思主義
つまり登記は物権変動の成立要因ではなく、対抗要件である
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
【民法第177条】
登記事項証明書の様式
表題部 |
|
---|---|
甲区 | 所有権に関する事項 |
乙区 | 所有権以外の権利に関する事項 抵当権や地上権など |
登記事項
対象 | 土地と建物 |
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登記される権利の種類 |
|
権利の変動 |
|
登記請求権
登記は当事者の申請によってなされる。:当事者申請主義
登記権利者と登記義務者が共同で行う:共同申請の原則
中間省略登記
AからB、Cと転売された際に、A→BとB→C間の2回の登記ではなく、A→C間の1回で移転登記すること
登記の公信力
登記には対抗力はあっても公信力はない。
つまり真実ではない登記がありその登記を信じて取引をしたとしても、保護されない。
ただし代金の払い戻しや損害賠償の請求は出来る。
仮登記
登記をするための条件が完全に揃っていないときは仮登記が可能。
本登記に備え、優先的な順位を確保する目的。
登記で対抗するとは?
二重譲渡の場合
所有する土地をAとBの2人に売った場合、先に登記した人の物になる。
もしもBより先にAに売って代金をもらっても、Bの方が登記が早ければ、Aの物にはならない。
第三者に含まれない者
- 詐欺・脅迫によって登記の申請を妨害した第三者
- 他人のために登記を申請する義務がある者
動産の物権変動
動産の物権も不動産と同様、意思表示のみで移転する。
ただし動産の物権変動を第三者へ対抗するには引き渡さなければならない。
つまりいくら先にお金を払ったとしても、先に引き渡しの約束をしたとしても、実際の引き渡しを受けた人に所有権がある。
動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。
【民法178条】
「引渡し」の意味
「引渡し」は実際の手渡しのみでなく、簡易の引き渡し・占有改定・指図による占有移転も含まれる。
不動産 | 動産 | |
---|---|---|
物権変動 | 意思表示 | 意思表示 |
公示方法 | 登記 | 引渡し |
対抗要件 | 登記 | 引渡し |
公信の原則 | 認められない | 認められる |
動産の例外
下記の重要かつ大型の動産は登記または登録が対抗要件となる
船舶 | 登記 |
---|---|
建設機械 | 登記 |
自動車 | 登録 |
航空機 | 登録 |
即時取得
世の中のあらゆるものが動産であり、頻繫にスピードを持って取引が行われる。
相手と取引を行うのに、いちいち真の所有者を確認していられない。
善意かつ無過失ならば、所有権は引き渡しを受けた者に移転する。
これが即時取得。
即時取得の対象
即時取得の対象となるのは動産。
不動産や重要動産は対象外。
即時取得の要件
- 取引行為によって動産の占有を取得した
- 取引自体が有効である
- 平穏・公然・善意・無過失で占有を取得した
もしも真の権利者が物を取り戻すためには、上記のどれかを否定しなければならない。
盗品・遺失物に対する特則
盗まれた人や失くした人はその時点から2年間は占有者に対してタダで返還するよう請求することが出来る。
ただし占有者が競売や公の場で善意で取得した場合は、支払った代価を弁償しなければ戻ってこない。
前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
【民法193条】
占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
【民法194条】
物権の消滅
物権が消滅する場合
- 目的物の消滅
- 混同(179条)
- 放棄
- 時効
- 公用収用
- 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
- 所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
- 前二項の規定は、占有権については、適用しない。
【民法179条】